歯科正則治療の勧め

臼歯離開咬合=鋭利で歯切れの良い咬み合わせ

臼歯離開咬合=鋭利で歯切れの良い咬み合わせ

2017年02月16日

1) 歯列は中立空隙 : Neutral Zone(資料78-1,2)と呼ばれる舌圧と唇頬圧が, 均衡した空間に安定します.  術後の咬合の安定を得るためには, 上下顎の歯列に囲まれた適正な舌房: Oral Cavityを確保することが大切で, そのためには, 適切な咬合高径を回復することが極めて重要です.


2) 咬合高径が不足すると, 術後7,8年経過後には, 次第に歯列が頬側に倒れて, 咬合ベクトルは水平分力を発生して, T.Messermanの「咬合の基本原則」にある通り, 上下の臼歯部の咬合接触は破綻して, 咬合する度に歯列は唇頬側方向に押し倒される水平分力が働くようになり, 咬合が破綻します(資料79 ).


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3) 咬合高径を十分高めて回復できない短頭型の場合には, 上下顎の歯列が唇頬側に舌圧で倒されるのを防止する目的で, Palatal Bar(資料80)Lingual Bar(資料81)で歯列を固定するか, 上下顎の歯列, または, インプラント同志をPatrix(資料82)で固定して, その上にOver Denture (資料83)を製作するしか, 良い解決方法はありません.

 

資料80

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資料81

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資料82

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資料83
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4) Immediate Side Shift : ISS(=下顎水平回転軸方向の遊び)の解消 : 歯軋りのない鋭利な咬頭傾斜角を備えた歯切れの良い歯冠修復を実現するには, ISSをゼロに解消することが極めて重要です. その結果, 咬合干渉のない鋭利な咬頭傾斜角を備えた咬合面で, 歯切れの良い歯列が回復します(資料 84).

 

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5) 下顎関節の遊びである Immediate Side Shiftを解消するための成人咬合矯正治療を行っている矯正専門医は, 私以外には国内にはいないと思います.その結果, Wide Centric OcclusionPoint Centric Occlusionになり, 咬合干渉のない鋭利な咬合面の歯冠修復物を製作することが実現します.

 

6) その結果,  28本〜32本の歯冠修復物が咬合調整の必要がないため, 一度に口腔内にセット・合着できている所は世界中で, 私以外にはいないと思います.    

 普通には半年〜1年かけて,  23本ずつ分けて作るか,「仮着・リマウント・咬合調整」という半年〜1年間かかる時間と手間のかかる操作を必要としていて, 平坦な咬合面を余儀なくされています(資料16「正則歯科医療のご案内」のP. 50,53,54,59,62,65,67,68,71,73,74,

75,77,78,82,83,85,87,90,91,94,95,100頁参照).


7) その上
, 治療が終わった後は, 透明なレジンで歯軋り防止装置: Splintや, Night Guard(資料85)を製作して, これを食事以外の時間は上の歯に嵌めているように指導されています. そうすることにより, Ceramicの破損と歯の摩耗を防止するのです. 私はSplintを必要としません.

資料85

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8) 普通にはImmediate Side Shiftを解消しないまま, 歯冠修復していますから, 上下の歯冠が咬合干渉という擦れを避けることができませんから, 咬合調整と称する削合調整が必要で,私が採用しているWax Cone(資料86-1,2)を採用している歯学部は皆無です.

全部の歯学部と国内の開業歯科医や歯科技工士はWax Curving法を採用して, 歯冠修復物を製作しています.


資料86-1,2    Wax Cone Technique

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9) 補綴の大家を自認する歯科医は, 人手がかからない代わりに, 不正確なシリコーン印象法を採用しており,1st, 2nd, 3rd Provisional Restorationと呼ばれている仮の歯を3回も作り変える手間と暇を費やす試行錯誤法で, 下顎安定位と呼ぶ習慣位を探しすのに, 1年間を費やしています.

 

10) 咬合採得法も, Horizontal Axisの採用法を知らないために, Cross Mount Techniqueと呼ぶ,  Gothic Arch Tracing法に準拠した方法を採用しています.それは, 咬合高径を模型上では一切変更できない, 極めてお粗末な代物です. Cross Mount Technique, 「苦労するテクニック」です.

 

11) 咬合性外傷を防止するのに必要な, 確実な臼歯離開咬合を実現するためには, Over Bite量は35mmが必要で,  標準的には4mmが必要です(資料87).

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アメリカ, ヨーロッパ, 日本の矯正歯科学会は, [個性正常咬合」と呼ばれる前歯部の審美性だけに関心をもつた[審美矯正]ですから, 臼歯部の咬合性外傷が発生しないように, 前歯部の咬合が臼歯部を保護する『臼歯離開咬合」の回復に無関心です.


その結果, 成人して結婚を控えて, 審美矯正を矯正歯科指導医によって受けた患者の多くは, 40歳になると, 多くが重症の歯槽骨吸収を伴う歯周病にかかって, 困り果てています(JM).



12) 岩田健男先生の論文にある臼歯部咬合面の写真はどれも皆, 平坦な歯切れの悪い形態を見せています. これらは, ISSの存在を放置して製作している結果です.


 

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13) 普通にHinge Axisを求めた後, 頭部を起こして直立させ, 下顎運動の軌跡を耳珠前方の皮膚上に描かせると,  Hinge LocatorNeedle PointHorizontal Axisになります.

 

14) このHorizontal Axisから前下方にAOP=Axis (Infra-) Orbital Plane=水平基準面となす角度を, 顆路角(資料70)と呼びますが, 2009年までに測定した1,300 人の平均値では,  54.8度でしたから,  資料89は大きな誤りです.

 

15) その上, さらに大きな誤りは, 臼歯部の咬合干渉を避けて, 臼歯離開咬合を営ませるためには, 前歯部の前方運動を誘導する切歯路角の大きさと, その長さが大切です. ヨーロッパ. ・アメリカ. 日本の矯正歯科学会が治療目標としている個性正常咬合のOver Bite量は1.52.0mmですから, これでは絶対に臼歯離開咬合を設定することは不可能です(資料36).

 

16) 中心位の位置はHinge Axisではなくて, Horizontal Axis:HAに一致します. 下顎運動の前方軌跡は, このHAから前下方向に45mmは全員直線を描いて運動します(資料89). この45mmは前歯部の切歯路の長さに相当します.

 

17) 下顎前歯部が上顎前歯部の舌側面に接しながら移動する際に認められる切歯路の長さと, AOP(水平基準面)となす切歯路角の大きさが大切です.

 

18) しかし, 国内で販売されている8種類の平均値咬合器は資料87にある通り, 顆路角は30度以下で, 顆路角よりも, 切歯路角が小さい値が示されていますから, これでは, 臼歯離開咬合は絶対に不可能です.

   この一覧表を見る限り, 国内の咬合器メーカーの指導者である, かの保母須弥也先生を初めとする歯学部補綴科教授らは, 一人も咬合の生理を理解していないことが明らかです.

 

19) 下顎全体は開口運動を伴いながら前方運動するのが自然ですから, 切歯路角=Incisal Guidance AngleAOP(水平基準面)となす角度は, 顆路角に10%15%加えた大きな角度である必要があると言われています. その正しさは咀嚼筋の活動電位研究でも証明されています.

 

20) 私が実測した1,300症例は平均54.8度の顆路角でしたから, 前歯部に被蓋(Over Bite)のない開咬や反対咬合でも, 下顎が前方運動した際に, 第一小臼歯同士が擦れる咬み合わせでは, Long Centric Occlusionになりますから, 下顎臼歯部は顆路角によって, 上顎臼歯部から離れるため, 擦れないChristensen現象(資料88)が発生しますから, 臼歯部の前後的咬頭干渉は発生することなく, 安全です.


資料88


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21) しかし, この場合, 切歯路角がゼロで, Long Centric Occlusion:LCO(資料89)であっても,  Lateral Guidance Angleの大きさと, その長さが保証されていることが重要です.

 

22) Long Centric Occlusion:LCOであると, 顆頭と切歯点との位置関係から, 第二大臼歯部の前後的傾斜角は平均的顆路角の1/2 程度になり. 第一小臼歯では0度になりますから, 前後的には歯切れの悪い平坦な咬頭傾斜角になります.

 

23) 正常な場合には, 切歯路角は顆路角の1015%=平均12.5%, 大きな角度である必要があります. 理想的な切歯路角は顆路角平均値54.8度の1.125倍の61.65度ですから, 第二大臼歯部の前後的角度は54.8度の1.06倍程度である57度程度あり, 第一小臼歯は54.8度の1.1倍程度の60度程度です. 資料92に見る通り, 切歯路角が臼歯部咬合面の鋭利さに及ぼす影響は絶大です.


※資料92

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LCOでは, 57度が27度に, 60度が0度になりますから, 前後的には歯切れの悪い平坦な咬合面になります.

 

24) 犬歯・小臼歯部に側方誘導路が十分長く(4mm5mm), 側方誘導路角が顆路角に等しいと, それによって, 臼歯離開が得られますから, 切歯路角が0°であっても, 臼歯部の頬側と舌側の左右的(前頭面) 咬頭傾斜角は鋭利になります.

 

25) 臼歯部の咬頭傾斜角の前後的な大きさは, AOP(水平基準面)と咬合平面が作る相対顆路角(資料90)の大きさに影響されます. 咬合平面がAOPと平行になれば, なる程, 臼歯部の咬頭傾斜角は大きくなり, 前後的に鋭利な咬頭傾斜角になります. その様子は, 資料91にあります.


26) 以上の臼歯離開咬合を担保する考え方から判断すると, ヨーロッパ, ・アメリカ, 日本の矯正歯科学会は, このような条件をまったく知らないままの単なる審美矯正で満足していることに問題があります.

 

27) 日本矯正歯科学会は下顎運動を無視した静的な頭部X線規格撮影: Cephalogram分析に留まること無く,下顎の4次元的な運動にも関心を持った動的な診断と治療が大切なのです.

 

28) このことは, 日本顎咬合学会も, 日本歯科補綴学会も 日本歯周病学会, 日本顎関節学会も同罪です. それらの学会には, 下顎運動のDynamismに関する視点が欠落しています.